前に、ユーラシア大陸の東西を結ぶ古代ケルト文化と日本神道の共通した宇宙観について述べました。
本稿では、ケルトのみならず、キリスト教以前の原始多神教であった古代ゲルマンの北欧神話と日本神話の共通性について紹介いたします。
万物の循環思想、ワンネスの生命観、破壊から創造へとつながる宇宙観…。
その他諸々、北欧神話の生命観、宇宙観、並びに宗教的儀式は、日本神道のそれと非常に酷似しています。北欧神話を信じていた彼らは、ひもろぎを用いて太陽を拝んでいましたから。
そもそも、神話は古代人の妄想ではなく、現代人より遥かに鋭敏な感性を持っていた古代人が把握した民族の宇宙観です。
民族の元々持っている世界観や宇宙観は、人工的な理性以前の、人間存在の根底を成すもの。
北欧神話と言っても北欧限定ではなく、欧州の広範囲をカバーしていた宗教観なのです。
キリスト教以降のローマ人にとって森は征服すべき対象でしたが、古代ゲルマン人にとっては、森こそがそこに還って行きまた生まれて来る生命の源であり、神聖な場所。
彼らにとっては「ゲルマンの森」こそがふるさとであり、森には愛があり、命があり、夢があり、温もりがある。
今もドイツ人は、自然派志向が強く温泉大国なのは、森や自然を畏敬する古代ゲルマン以来の伝統が今日まで生きている証拠だと思います。
また、ゲルマンの北欧神話と日本神話は、神様のキャラクターまでそっくりなのです。
建御雷神と、雷神トール。
これなんかはもう、瓜二つ。
ヤマタノオロチ伝説とジークフリート物語も似ています。
また、北欧神話を奉じたゲルマン戦士(主にバイキング)と、日本神道を重んじた日本武士。
当然ながらこれも生命観・死生観が一緒。
さらに…。
イギリス人とドイツ人の血を引くウォルト・ディズニー。
ディズニーの作品ではシンデレラを始め、キリスト教以前の古代ゲルマンの土着の伝承をまとめたグリム童話をモチーフにした作品が多くありますが、一連の作品の中でもやはり、森が美しく描かれている。
その他のディズニー映画の中でも、森の妖精や空飛ぶ魔法使いが頻繁に出てきますが、これはやはりイギリス(ケルト神話)とドイツ(北欧神話)の血を引く母親からの影響が大きかったと思われます。
日本人がディズニー作品が好きなのは、ファンタジー的な日本神話との親和性・近似性を無意識に感じているからではないでしょうか。
記紀が今も生きてるいる日本人の感性に合うのではないでしょうか。
舞浜のディズニーランド。
あれは日本神話の現代版だと思います。
縁日での神輿や山車、または盆踊りのライトアップと、エレクトリカルパレードに見られる夜の華麗なイルミネーションが、私には同じものとして重なって見えてしまう。
共に、闇の中でこそ輝きを放つ発光体であり、現実世界と異次元世界を往還する様なファンタジー的な神秘性があり…。
昔の神社の縁日には、ディズニーランドの様に妖精が待っている古代多神教的な神秘性があったのでしょう。
前に、ノルウェーを舞台にして北欧神話をモデルにした映画『アナと雪の女王』が大ヒットしましたが、あの内容は「ゲルマンの森に眠る神々を甦らせる」というストーリーだったと思います。
かつて北欧神話を奉じたゲルマン人達は、後にバイキングとしてイギリス始め欧州各地に分散していきますが、彼らこそが今のアングロサクソンの源流なのです。
ですからあの映画が流行ったという事は「アングロサクソン文明の根底にあるかつての自然崇拝の世界観を、今こそ取り戻せ」という、人類の無意識の表れなのではないでしょうか。
Back to Norse mythology.
北欧神話に立ち返れ。です。
同じく北欧神話をモデルにした『ロード・オブ・ザ・リング』が21世紀最大のヒット作品となったのも、同じ理由からだと思います。
つまり、自然崇拝の原始多神教的な世界観と、近代科学の融合、霊性と資本主義の融合。
という事を、人類の無意識が求めているのではないか、という事を考えました。
北欧神話や日本神道に見られる原始多神教は一神教と対立概念ではないので、一神教から生まれた資本主義と、矛盾なく溶け合えるのだと思います。