山本五十六以下、海軍上層部は、日本防衛の為に絶対やらなければいけなかったサイパン島の要塞化を、一切やらなかった(サイパン島は海軍の担当エリア)。
アメリカは、砲火を集中的に運用する短期決戦では無類の強さを発揮しますが、山岳戦は苦手です。
事実、サイパンでは日本軍が水際作戦を放棄して奥地に後退してからは、制圧まで3週間ほどかかっています。
戦線が余りにも進まないので、米軍は師団長を2回も更迭しました。
要塞化していなくても、サイパンの山岳戦で米軍はこれだけの苦戦を強いられているのです。
そもそも、日本を空襲するB29はサイパン・テニアンといったマリアナの航空基地から飛んで来ます。
だから、海軍がサイパンさえ要塞化しておけば、大東亜戦争は勝てないまでも負けなかった。
親日派の蒋介石が決定的に態度を改めたのも、サイパン失陥後です。
それほどまでに重要な戦略的価値を持つサイパンの防衛を、完全に等閑視したのは海軍上層部の重大な責任です。
山本五十六以下の連合艦隊司令部は開戦以来、この戦略的価値に全く気付かず、戦線を太平洋の奥地(つまり敵の勢力圏下)にどんどんと広げて行きました。
しかし、戦線を前に進めるだけ進めても、後ろの守り(サイパンの要塞化)は全く固めていない。
つまり山本五十六達の戦い方は、ゴールキーパーなしで試合をしている様なものです。
ですから、伸び切った戦線が維持出来なくなると総崩れになり、しかし敵の勢力圏下に取り残された陸軍将兵は海軍からの武器弾薬や食料の輸送がないまま、数十万人から百万人単位で餓死・戦病死するという結末になる。
これが戦没者の実態です。繰り返しますが戦没者のほとんどが、敵と戦う前に餓死・戦病死・水没で亡くなっているのです。
それにしても、大量の餓死と病死…。アウシュビッツに出て来る言葉です。
だから大東亜戦争でのそれは、海軍上層部の無能による、ある意味、自国民へのホロコーストです。
故意に無視して物資を送らないのですから…。