『潮騒』は、太陽と肉体の賛歌
あくまでも主観ですが、『潮騒』の中で私が好きな所は、「結局、関係を持たない」という点です。
あの「焚き火の前でお互いが裸になるシーン」は前半のクライマックスですが、女の子が「嫁入り前の身で、そんな事したらいけん!」と言って「それ以上」を許さない。
「最後まではいかない」という所が「青春小説」たるゆえんだと思います。
要するに青年と少女だから「恋の仕方」を知らない。
恋が「形」になるのが大人の恋なら、まだ「形」にならないのが青春時代。「青春の恋」だからこそ、その寸前で止まって、甘酸っぱい。
それを描いています。
結婚するまでお互い未経験という、『潮騒』の「寸止めっぷり」が、私は凄く好きです。
しかしそれにしても、一方では「生命尊重以上の価値としての天皇」を求め、一方では『潮騒』の様な純愛文学を通じて古代ギリシャ神話をテーマにする三島先生の壮大な世界観には圧倒されます。