横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

三島由紀夫 文学 『潮騒』について

潮騒』は、太陽と肉体の賛歌

 

金閣寺』が火の洗礼によるバッドエンドならば、『潮騒』は水の洗礼によるハッピーエンド。

 

海神の恩寵あついギリシャ神話的な逞しい好青年と、大和撫子マインドのかたまりみたいな清純な乙女の、一途で純粋な青春ラブロマンスです。

 

潮騒』は、偏執的狂者や変態性欲者、犯罪者といった偏った主人公が多い三島文学の中で、稀に見る「健全な青春文学」であり、作品の純度が高い清純な作品です。気持ちがいい位に、青春しており、読んでも心が濁らない。

回も映画化されて、吉永小百合山口百恵が出演しています。 

 

あくまでも主観ですが、『潮騒』の中で私が好きな所は、「結局、関係を持たない」という点です。
 
あの「焚き火の前でお互いが裸になるシーン」は前半のクライマックスですが、女の子が「嫁入り前の身で、そんな事したらいけん!」と言って「それ以上」を許さない。

「最後まではいかない」という所が「青春小説」たるゆえんだと思います。

要するに青年と少女だから「恋の仕方」を知らない。

恋が「形」になるのが大人の恋なら、まだ「形」にならないのが青春時代。

「青春の恋」だからこそ、その寸前で止まって、甘酸っぱい。

それを描いています。

結婚するまでお互い未経験という、『潮騒』の「寸止めっぷり」が、私は凄く好きです。 

しかしそれにしても、一方では「生命尊重以上の価値としての天皇」を求め、一方では『潮騒』の様な純愛文学を通じて古代ギリシャ神話をテーマにする三島先生の壮大な世界観には圧倒されます。