横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

三島由紀夫 文学 『仮面の告白』について

幼少期のゆがんだ生育歴を吐露

「我々は待った。もう待てない」

自決する直前のバルコニー上での三島先生の最期の絶叫ですが、僭越ですが私には、
切腹したいという願望が、もう待てない」
とも聞こえてしまう。
 
親からの愛情に飢えたゆがんだ環境の中で育ち、「ありのままの自分」が受け入れられず、本当の自分を抑圧して「自分ではない自分」という仮面を付けて生きざるを得なかった三島先生の幼少期。
 
狂気性を天才的な文才に昇華
その生い立ちを告白した『仮面の告白』では、悲劇的に死ぬ事への憧れや、痛め付けられる事への願望が、赤裸々に吐露されています。  
 
三島先生は、生い立ちのそのマイナスの経験を、文才に昇華させたわけです。
 
以下は、精神科医岡田尊司 先生が書いた『パーソナリティ障害』より
 
「多くの偉大なアーチストは幼児期に愛情面での傷つきを持ち、しかしその為に極度に繊細な感性と表現力を獲得している。
彼らが溢れる愛情の中で育っていたら、一流のアーチストにはなれなかっただろう。
優れたアーチストになる為に幼児期の愛情の傷つきは、それを補って余りあるだけのものをもたらすのである。人生に無駄は無いのである」
 
まさに三島先生に当てはまる言葉だと思います。