横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

今こそ、伝えねば…旧軍人インタビュー⭐️大東亜戦争で米軍に最も損害を与えた大隊長

東孝一 先生

1920年大正9年)お生まれ。

陸軍士官学校54期。

第32連隊 第1大隊長

沖縄戦、いや、大東亜戦争を通じて最も敵軍に損害を与えた大隊長

伊東先生のお話

敵の上陸地点は、リーフの形状からしても嘉手納海岸しか考えられないので、日本陸軍 虎の子の第5砲兵団以下、全ての火力を嘉手納海岸にのみ集結させる。

そして敵をいったん上陸させておいてから、海岸線で整頓未了の敵軍に対して、敵の上陸第一日目にこちらはありったけの砲撃を加えて、更に海岸に堆積された膨大な敵弾薬の誘爆を引き起こし、しかる後に歩兵の総突撃を行い我が方得意の白兵戦に持ち込む。

敵味方が入り乱れた接近戦に誘致すれば、敵は同士討ちを恐れて重火器を使えず、これにより敵の有利な火力を無力化し、機動力を封殺出来ます。

つまり海岸線において敵に決戦を強要し、戦場を混乱に導いた後に、一気に雌雄を決する。

これにより、少なくとも敵の上陸第一波は粉砕出来る。確実に出来ます。

しかし、我が方が決戦で勝利する戦機は、敵が整頓未了の上陸第一日のみ。

上陸二日目以降だと敵の態勢が整ってしまう。そこから総攻撃してもダメなんです。

だからあくまでも、総攻撃は敵の上陸第一日目に限定する。そこに全ての火力を結集し、そこから先は徹底的な持久ゲリラ作戦です。

持久ゲリラ戦になっても、こちらが時間をかけて作った本島内部の堅固な築城が、米艦隊の艦砲射撃や1トン爆弾を跳ね返し、敵の物量を無価値に出来ます。

それに、そもそも上陸第一波で粉砕されたら、敵もそれ以降は及び腰になる。

そしてアメリカは世論の国。人命尊重の国。

硫黄島でも、米軍は内陸部に引き込まれて大損害を出しているので、沖縄でも上陸初頭でそこまで損耗を受けたら、アメリカ世論が黙ってないです。  

2015年1月 聞き取り

…これが私が、伊東先生からお聞きした沖縄戦必勝の構想です。第32軍高級参謀・八原博通大佐の「寝技戦法」にも通底しています。

「寝技戦法」とは「力任せに来るボクサー(米軍)に対し、力(物量)で劣るこちらは相手の有利な土俵で戦わず、寝技に持ち込む」という戦い方です。

前年1944年(昭和19年)10月の台湾沖航空戦の誤報並びに海軍上層部の隠蔽、そこから波及した「最精鋭師団の抽出」がなければ、この作戦が実行されるハズでした。

そうなれば、沖縄戦を日米決戦の地として、有利な対米講和を行えた可能性が高い。

本当に無念です。