※①の続き
「70年間、語れなかった。最近やっと、口に出せる様になった」
という奥様もいらっしゃいました。
思い出すだけで血が吹き出す心の傷が、ようやくかさぶたになるのに、70年かかった、という事です。
書物から得た知識というのは、その描写がどれだけ具体的であったとしても、それはあくまでも実体験の近似値に過ぎません。
ですから、戦争を経験していない戦後世代の我々は、戦争の実相を「本当に「知る」事は出来ません。
しかし、体験者の声を聞き伝え、語り継いでいく事を通じて「知る努力」は出来ます。
全身が焼かれる中、腹がパックリと裂けて飛び出した内臓を泣きながら一生懸命にお腹に戻そうとする少年。
「炎で目を焼かれたから、周りが一切見えなかった」という少女。
焼けただれた我が子を抱き上げた瞬間、我が子の全身の皮がベロリとむけてしまったという父。
顔を上げた瞬間、炎の突風に吹き飛ばされ、目の前で幼児が炎に包まれて半狂乱のまま悶絶して焼け死んでいくのを、どうにも出来なかったという母…。
「不況とは言え今の東京の空前の繁栄は、亡くなった人達の犠牲の上にある」
「自由をはき違えてはいけない」
「死んだ人間にも、尊厳はある」
何人もの空襲経験者の方達からお聞きして、私の胸に刺さった言葉です。
20名以上の方達から体験をお聞きしましたが、まず、資料の整理が終わった方からご紹介していきます。