※①の続き
日本人が語り継がなければ、誰が語り継ぐのか
清岡さんのお話、いかがだったでしょうか。
しかし戦後、東京大空襲の罹災者は傷痍軍人と違って、政府からあまり顧みられる事はありませんでした。
これだけの死者を出した東京大空襲というのは、実はこれまで78年間、その犠牲者の慰霊碑が建立されて来なかったのです。
墨田区にある都立「横網町公園」内にある『東京都慰霊堂』には、東京大空襲で亡くなった方達のご遺骨も安置されてはいますが、そもそもここは関東大震災での遭難者のご遺骨を納める為の霊堂です。
ですから、東京大空襲で亡くなった方達は、いわばそこを「間借り」している状況です。
つまり、原爆ドームや浦上天主堂の様な、目に見える形での象徴的な慰霊碑がないので「残された我々は、どこに参拝していいのかわからない」というのが実態なのです。
つまりこのままでは、社会的にも、学校教育現場でも、「無かった事」に本当にされかねない状況なのです。
「死んだ人間にも尊厳はある」
絶対に忘れてはいけない事は、今日の日本の繁栄は、あの戦争で亡くなられた数百万人の血の代償の上に成り立っているという事実です。
今は亡き御霊に対する対する畏敬の念を持ち続け、語り継がなければいけません。
「私の存命中に慰霊堂の建立を…」
「死んだ人間にも、尊厳はあるんです。声を挙げたくても挙げられない御霊達に代わって、かすれ声でも挙げていきます」
90歳の清岡さんが最後に語った言葉こそ、全ての空襲経験者の、切なる願いではないでしょうか。
2018年6月 聞き取り