横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

海軍上層部の大罪 21

一番勇敢な戦いをした陸軍将兵が否定され、一番卑怯な振る舞いをした山本五十六達 海軍上層部が称賛される、倒錯した戦後日本。


真の日本を作る為に、通らざるを得ない道。
 
それが、過去の検証です。
山本五十六をタブー視しないで、勇気を持って検証すべきです。
 
精神分析学によれば、問題の根源への遡行が首尾よく果たされたら、問題は解消されます。
 
糾弾されるべき人物達が糾弾されない。
それは国防を損ねて国益を毀損する事になり、上層部に隠蔽体質があると、国民全体に「国防精神の溶解」が起こります。
官僚の利益が、一般国民ひいては国家全体の利益に優先するという、悪しき典型例です。
 
海軍上層部の傲慢さは、日本海海戦の勝利を「自分達の力だけによる勝利」と勘違いして、成金の様になった所から歯止めが効かなくなりました。
日露戦争以後の「米国脅威論」も、海軍の予算獲得の為の新・屁理屈。
太平洋の向こうのアメリカに、日本侵略の意図はありません。
 
ですが、ここではあくまでも大東亜戦争に限定いたします。
 
大東亜戦争敗戦の最大の原因は、山本五十六にあります。 
彼以外には、米内光政、南雲忠一、草鹿龍之介、栗田健男…と続きますが、最後の栗田一人を例に取っても、レイテ沖海戦の後に彼の敗戦の責任を追及する気配すらありませんでした。
彼を罰しないという事はレイテ沖海戦で亡くなった全将兵への冒涜であり、80年の時を超えて将兵の慟哭が聞こえてくるようです。
 
また、このレイテ沖海戦もそうでしたが、「大本営 海軍部 発表」は、負けてるのに常に「勝ってる」「勝ってる」のウソ発表の繰り返しです。
隠蔽や不作為による無責任というのは官僚の犯罪の典型ですが、残念ながら昭和の海軍も、隠蔽に協力したら出世する組織だったのです。
 
何よりこれらのウソ発表は、負け戦の実態を隠したい人間達が権限を持っていて、第三者がそれをチェック出来ない状況下で発表されたもの。
幾らでもウソが言えるし、上 陛下に対し、下 国民に対し、だまし続けるわけです。
 
自己保身の為に国家戦略が大きく損なわれようとも、お構いなし。
これが官僚制の弊害です。
 
その点、アメリカ•イギリスは立派です。
負け戦の実態も、ちゃんと国民に正しく伝えていますから。
ちなみに「大本営 陸軍部 発表」は、負け戦の実態も、かなり正直に発表しています。
 
…そしてこのレイテ沖海戦で、海軍上層部が考え出したのが特攻隊という制度ですが、特攻は死刑執行と同じだと思います。
若者達に特攻に行かせる…。
これを命じた海軍上層部に特攻精神はありません。
 
彼らはただ特攻を命じて、若者の命を踏みつけて、権力のピラミッドの最頂点にい続けたわけです。
 
そしてその、レイテ沖海戦に続く大和水上特攻作戦。
これはあくまでも私個人の主観ですが、それを描いた映画『男達の大和』史観では、自分達は行かないくせに部下将兵に第二艦隊の特攻を命じた海軍上層部の責任が全く問われていない。
 
だいたい、戦争は自分の軍艦が沈む事に大義があるのではなく、敵を倒す事、勝つ事に大義があり、それが男性原理です。
あの映画の原作者は辺見じゅん女史という作家ですが、情緒に過ぎる気がします。
 
それに続く同じく終戦美談でも「原爆を防げなかった責任」は問われていない。
 
日本人は情緒的なのだと思います。
結果責任を問う」というのは、情実とは無縁ですから。
 
…この、多くの局面で見られた海軍上層部の「若者大量殺戮」の思想は、増加する死者数を穀物の生産高の様にしか見ないソ連共産主義と同じであり、要するに人命軽視のマインドで、両者は同じ。 
海軍は「人喰いマシン」か。
 
これは仮説ですが、受験勉強というのは、やればやるほどメンタルが共産主義になるのではないでしょうか。
 
しかし、旧軍は陛下がヒエラルキーの最頂点におわしますゆえに、旧軍人さん達にとって「下からの敗戦責任の追及」というのは、体制破壊の為の「下からの共産革命」に見えてしまうのかも知れない…。
 
ただ、敗戦責任者を糾弾しないと、命を賭けて国を守ろうなんていう意気込みは、絶対に生まれて来ません。
作戦の大失敗で部下将兵を大勢死なせた無能な指導者達を称揚したまま、国民にただ一方的に「国に尽くせ」と言っても、説得力がありません。
 
2023年時点で98歳の陸軍軍人、坂上多計二先生のお言葉↓
 
愚かな指導者を上にいただいた時、下がどれだけ苦労するか。
負け戦の悲惨さを想起せず、戦争を美化して語る人間の言う言葉を、信用してはいけない。