横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

海軍大学校のゆがんだ教育 ③ 密室の終身雇用

日本海軍は情報を軽視して、情報なしで戦争をした」

軍令部情報部アメリカ課 実松譲 海軍大佐。

 

ここにも、海軍上層部のエリート官僚の「思考の偏り」がある。

連合艦隊 参謀長を勤めた福留繁 海軍中将も、最後まで艦隊決戦の思想が抜けなかった。

レイテ沖海戦や坊ノ岬沖海戦で、戦艦『大和』以下の艦隊に空からの護衛をつけずに突っ込ませたのはその証。

海軍は明治以来、少数で勝つには、機先を制して不意をつくを骨子とした。   

偏った「戦争屋」が出来上がるのが海軍大学校であり、それは、自身が在籍した上記の実松譲でさえ言っている。

海軍兵学校の中の成績優秀者が海軍大学校に進むわけですが、問題はその、海軍兵学校のハンモックナンバー。

これが大東亜戦争の敗因の一つである「海軍という組織の硬直性」「情実人事」の根源です。

3年間の在校中のありとあらゆる事が点数化され1番から100番前後まで番号が振られます。  

一般世間から隔離された特殊な閉鎖社会で、その中でもクラスのトップグループが、横並びから抜擢されて同期より進級が一年早くなるという、完全な官僚組織。

そこで芽生えるのは、思考の偏りと自己保身、責任回避そして抜き差し難い特権意識です。

日本の至宝・戦艦『大和』を空の護衛なしで裸で突撃させる。もう完全にバランスを失っています。

この大和水上特攻作戦については、

「実際に参加して戦った方達の偉大さ」

「作戦を立てた上層部の愚かさ」

この二つを見ないといけない。

昭和天皇でさえ「愚かな作戦であった」とおっしゃったこの特攻作戦の、作戦自体を美化する人間は脳内お花畑と言うか、それこそ戦没者への冒涜です。

この特攻作戦は、映画などでよく美化されますが、戦争における大義とは「味方の軍艦が沈む事」ではなく「敵を倒す事」です。

大和水上特攻作戦は、戦術的に戦略的にも愚策中の愚策。

破れかぶれの攻撃を下に押し付けた、連合艦隊司令部の責任は重い。

本来は、このような事がないようにしなければならない。

それが「特攻隊の意を汲む」という事であり、「実際に特攻に行かれた方達の行為を無駄にしない」という事です。

特に上に立つ者は「実際に特攻に行った部下将兵」をいくら讃美したとしても、部下達に行かせる特攻作戦を思いついてその決断を下した事自体を美化してはならない。