海軍大学校 出身者というのは、競争率20倍の偏った理系エリート集団
海軍兵学校の成績優秀者(1クラス平均16%)が行く海軍大学校で学んだ人間が、海軍の中枢のポジションに就きました。
しかしここで学ぶ海軍士官というのはエンジニアであり、理系の受験エリートは、いくさにおける指導者には向かない。
そもそも海軍大学校というのは、人格陶冶・人間形成教育はほとんどなく「艦隊決戦に勝つ為の戦術」にのみ重きを置く偏った機関だった。
ここは「海軍将校に高等の兵術を教授する所とす」と言う通り、教官が言った通りの答案を書けば上に行ける。
そしてそこで学ぶのは、早ければ子供もいる年齢の人達です。
こういう世界に身を置いて、「保身に走るな」と言っても無理です。
そもそも、海軍自体がミスをしたらポイントが減る減点主義で、考課表に基づいて出世する世界。
これでどういう人間が要職に就くか、どういう偏った戦争になるか、ご理解いただけると思います。
エリートが真面目に物事に取り組んで、人々を地獄に連れて行く
また、中央のその偏りから派生する当然の帰結として、日本海軍というのは用兵だけではなく、建艦思想も一方の方向に巨大化させる偏ったものになりました。
1942年夏以降、米軍はガダルカナルに上陸する海兵隊の輸送船団護衛の為に、(日本海軍よりも)少ない中からかき集めた空母を含む全主力艦艇を出撃させました。
片や日本海軍は、1942年10月の南太平洋海戦で勝ったのに制海権制覇をしないで引き上げ、当時、世界最大最強の戦艦『大和』『武蔵』以下の主力は、ガダルカナル島での日本陸軍の飢餓状態を尻目に、山本五十六を中心にトラック島で全艦お昼寝。
駆逐艦が輸送船団の護衛をしましたが、そもそも駆逐艦の主砲は仰角が上がらず、戦争の途中に登場した『秋月』型までまともな対空砲火はありません。
つまり『大和』『武蔵』の様な一点豪華主義の世界一の超巨大戦艦を建造したかと思いきや、輸送船団につける護衛の軍艦はほとんどない(駆逐艦は軍艦ではない)。つけても対空砲火なんか期待出来ない。
対潜水艦戦術も、全くなし。潜水艦に対する守りを、考えていない。
結果、戦争を通じてこちらの空母は9隻もアメリカの潜水艦に沈められた。
またそのアメリカの潜水艦は、日本側の輸送船を500万トン近く沈めている。
一方、日本海軍側はそもそも「味方の輸送船を守る」という発想がないんです。
海軍大学校では「敵の軍艦を沈める為の戦術」に、特化して教育されて来たから。
恐るべき偏りです。
(海軍大学校卒業生の中には、第三次ソロモン海戦で鬼神をも哭かしむる奮闘をした戦艦比叡の艦長 西田正雄 海軍大佐や、敷島隊に先駆けて自ら体当たり攻撃をした第26航空戦隊司令官 有馬正文 海軍少将の様な、日本人が語り継ぐべき立派な武人もいる)