横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

海軍上層部の大罪 ①

大東亜戦争の主たる敗因として、海軍兵学校卒業時の成績でその後の昇進が決まる海軍の硬直した組織運営と、情実人事。そして隠蔽体質が挙げられると思います。

日露戦争終結以来、中国大陸は陸軍担当。太平洋方面は海軍の担当です。

ですから大東亜戦争の敗因の相当な部分を海軍上層部が負っている事は、間違いありません、

アメリカ型の組織では結果責任・信賞必罰が徹底されていますが、日本海軍は真逆で、指導者達がどんなに大失敗しても、仲間同士でお互いに失敗や罪を隠蔽し合うわけです。 

仲間の失敗を糾弾すると、自分が失敗した時にも糾弾される。

逆に言うと、自分が失敗した時にも追及して欲しくない。だからその為の保険として、仲間の失敗も追及しない。

こうして、お互いの失敗や罪や不作為を不問に伏す。

しかし、中央から発したそのことなかれ主義的な隠蔽体質は、中央から離れて遠くに行けば行くほど負の遠心力が働き、最前線にいる味方の将兵を薙ぎ倒す。

その最大の犠牲者が、海軍の一方的な要請により南太平洋の島々に分散されて、最後は取り残されて見捨てられた百数十万人に及ぶ陸軍の将兵であり、これが大東亜戦争の実態です。

中央の様々なマイナス要素が、全て現場の人間達にシワ寄せとなるという点でも、今の省庁と体質が変わらないわけです。

海軍大学校出身の彼らエリート将官にとって戦争というのは、定時に出勤して定時に帰宅して、無事に過ごせばその後の出世が約束されている平時のお役所仕事の延長だったのだと思います。

海軍上層部が考え出した特攻にしてもそうです。

「派遣労働の若者達の犠牲の上に、身の安泰を計る竹中平蔵

と揶揄している人がいましたが、

「特攻の若者達の犠牲の上に、自身達の『敗戦責任』をうやむやにして身の安泰を計る海軍上層部」

と、似ている構造だと思います。

また、海軍のお偉いさん達が考えたであろう軍艦の設計思想を見ても、日本の艦艇は攻守のバランスが悪く、「強さ」が非常に偏っている。大和・武蔵の様な一点豪華主義の一方、輸送船団を守る護衛艦は皆無に等しい。

要するに理数系の受験エリート官僚である海軍大学校の出身者達は、思考が偏っているのです。余裕の無さが、そこにつながっているのだと思います。

つまり日本の軍艦は攻撃一本槍であり、だから日本の軍艦は攻めている時は強くても、攻められると弱い。

空母が特にそうです。

最新鋭の空母大鳳はわずか一本の魚雷で、世界最大の空母信濃もわずか数本の魚雷で沈んでしまった。

中央の設計思想の偏りが、現場の乗組員の方達にシワ寄せされていくわけですが、この方達の奮闘を思うと、やり切れない思いです。

一方、アメリカの軍艦は攻守のバランスが取れている。

攻撃を受けた時の為に専門の消防隊が艦内に待機しており、ダメージコントロール能力は日本よりも遥かに高い。要するにタフなのです。

空母エンタープライズなどは、日本軍機にどれだけ攻撃を受けても沈みませんでした(第二次ソロモン海戦で250キロ爆弾3発、南太平洋海戦で250キロ爆弾2発 被弾、その他 特攻隊多数)。

大東亜戦争は、「ここがこうであったら勝てたのに…」というシーンが何度もありましたが、国益を決する決定的なシーンでミスをするのは大抵、海軍です。

組織はトップに倣います。

主因は海軍の指導者層の人材の劣化にあるわけですが、そういった意味では大東亜戦争はやはり、残念ながら「負けるべくして負けた」と思います。