横沢史穂のブログ

祖父が、ラバウルで負傷した陸軍の傷痍軍人でした。左右のイデオロギーに関係なく、戦争経験者の話を中心に編集したいと思っています。

海軍上層部の大罪 ⑤

まずミッドウェー海戦の「その後」について、から。ここにも強烈な「隠蔽体質」がある。

と言うか「隠蔽体質」しかない。

敗北を「目撃」してしまった海軍の将兵は、最前線に送り込んで死なせるか、隔離されました。

海軍上層部は政府にも陸軍にも国民にも敗北を秘匿して「勝った」と、ウソ報告、ウソ発表。

東條英機 首相いわく、

「ミッドウェーの敗北を正しく知らせてくれたら、爾後の戦争指導は変わった」

との事。

この時の連合艦隊 司令部の生き残り達は戦後、口を揃えて「運がなかった」と言いました。

しかし、10倍の兵力で出撃し逆に10倍の死者を出したミッドウェー海戦の敗北を、「運がなかった」とは何事か。

無能な司令長官のもとで文句もいわずに戦って、命と引き換えに空母ヨークタウンを沈めた空母飛龍の搭乗員達への冒涜だ(ヨークタウンへの最後のトドメは潜水艦伊一六八)。

この司令長官 南雲忠一は、第二ソロモン海戦でも、南太平洋海戦でも、すぐ北に反転して逃げようとしていた。実際、逃げた。

官僚に武士道精神は、邪魔なのでしょう。

そもそも、南雲は真珠湾攻撃において、地上に剥き出しだった450万バレルもの石油タンク群への、機銃掃射ですら視野に入ってなかった。あの時に攻撃しておけば、米艦隊は数ヶ月動けなかった。

開戦初頭に陸軍が、マニラのキャビテ軍港やシンガポールの軍港を攻撃した時は、燃料タンクや修理ドックを猛攻撃しているのと正反対だ。

真珠湾は水深が浅いから沈めてもすぐに引き上げられるのに、それでも軍艦撃沈(着底)しか考えていなかったのは、受験エリート官僚独特の「思考の偏り」である。

 

海軍上層部が考えた特攻も「責任ごまかし」「隠蔽体質」「思考の偏り」という本質は同じです。

そもそも特攻は、稚拙な作戦指導をした自分達の責任を若者に転化した、つまり「若者達を人間爆弾にして自分達の責任をごまかした」というのが本音ではないのか。

陸軍は、特攻の為の改装は行ったが、海軍上層部は特攻専用の兵器を次々と開発して実戦に投入した。自分達は行かないクセに。

海軍のエリート将校を育成する海軍兵学校のモットーは「指揮官先頭」です。ならば特攻でも真っ先に行かなければならない。

しかし、全特攻戦没者のうち、海軍兵学校出身者は、ほんの数%。

もちろん、この数%の方達の偉大さには、我々は満腔の敬意を捧げなければならない。

しかし、それとこれは別です。