※①の続き
フィリピンでは、部隊の仲間達と共にバンバン基地を脱出し、二週間飲まず喰わずでやっとツゲカラオ基地に辿り着きますが…。
着いたその場で、急遽、特攻隊の編成を命じられます。
田中先生達の中から特攻隊員を出せ、という命令です。
沈思黙考の後、田中先生は、「よーし、俺が行こう」と、名乗り出ます。
「これも一つの死に方。いずれ遅かれ早かれ往く身」
と、血を吐く様な思いで、特攻出撃を志願されました。
特攻機のコクピットに座り、離陸寸前に「この世から消えるのも数時間後」と、いよいよ覚悟を固めた時に「熱いものが頬を伝わった」との事。
ご両親の事。彼女の事。
そして再会の約束をしていた上官の事を想ったそうです。
ところが、離陸寸前に機体のエンジンが不調となり、特攻出撃は翌日に延期されます。
「死ぬ覚悟は出来ていて、飛行機と一緒なら怖くない」
しかし…。
結局、夜中にその機体が爆撃されて特攻自体が中止。
そのまま内地に帰還して今度は源田実 司令の下、特攻ではなく、偵察任務を命じられます。
凄いのがここからです。
正直、ツゲカラオ基地で最初に特攻の話が出た時は、さすがに内心は乗り気がしなかったそうなのですが…。
「一晩あけたら、逆にもう特攻が体から抜けないんです。
『俺は特攻隊だ。早く特攻に行かせろ。特攻以外やらねえよ。早く出撃させろ』
意識がこうなっちゃったんですよ。特攻に行かせてくれないから、ふて腐れちゃったんです」
凄いです…。
その後、源田司令から、
「お前の特攻は私が預かる」
と言われて初めて、
「特攻が抜けた」
との事…。
※③に続く