「まずはインド洋を制圧しろ」という日本国家が定めた本来の基本戦略においては、全くやる必要がないのに山本五十六が引き起こしたガダルカナルの戦いは、対米勝利が目的なのではなく、日本陸軍を殲滅する事が目的だったとしか思えない。実際にそうなった。
また、ガダルカナルで陸軍が大敗北すれば、その前のミッドウェーでの自身の大敗北の汚点が少し中和される。
戦艦『金剛』『榛名』によるヘンダーソン飛行場への艦砲射撃も、ガダルカナルに飛行場を作って取られた失敗を隠す為のパフォーマンス。
「海軍が独断で戦線を拡大して、陸軍に対し、敵の勢力圏下への派兵を要求。
しかし、派兵した後に海軍は後づめの支援を行なわず、つまり2階に上げてハシゴを外して、結果的に陸軍に莫大な死傷者が出る」
これが大東亜戦争で頻繁に繰り返されたパターンですが、そのプロトタイプは、アメリカとの戦端がまだ開かれていない1937年8月に始まった第二次上海事変だと私は思います。
北京郊外の局地戦に過ぎなかった北支事変を、南京・上海といった揚子江流域の中支にまで独断的に戦線を広げたのは、海軍大臣の米内光政です。
ファルケンハウゼンによって鍛えられた中国国民党の最精鋭部隊が、日本軍を今か今かと待ち構えていた当時の上海。
米内はその上海に陸軍の派兵を要求し実現させますが、陸軍将兵は3ヶ月で4万人の死傷者を出してしまいます。
うがった見方をすると、海軍上層部はこれで「陸軍殺し」の味をしめたのかも知れません。
南方だけでなく、北のアッツ島も同じパターンです。
糾弾されるべき山本五十六が糾弾されない…
それは国防を損ねて国益を毀損する。
国は悪では滅びません。愚で滅びます。
オウムは悪でしたが、愚ではなかった。
しかし「山本五十六 英雄論」は愚です。国家を根本から腐らせる愚です。